「冗談。すぐ怒るじゃん海風」

「……うるさい」

うるさい。
『海風』
久しぶりに名前を呼ばれて、ドキドキが収まらない。こんなの嫌だ。静まって、お願い。

こんなやつにこんな風になってるなんてバレたくない。

もう決めたのに。

遥琉のことは好きにならない。好きじゃない。
忘れるって。

なんで。

なんでドキドキしちゃうのよ。

「あと30分もこんな状態だよ。久しぶりに話したんだしこんな重い空気やめようよ」

「……っ、」

いったい誰のせいだと。

「悪かったと思ってるよ。昨日、あんなところ見せちゃって」

「……はぁ?悪かった?」

遥琉のことになると全然穏やかじゃいられない。

閉じ込められてしまったことへの不安がさらに遥琉への複雑な気持ちを煽ってぐちゃぐちゃにしていく。