「フッ、なにムキになってんの」

「べ、別にムキになんか……」

なってる。
十分なってるよ。

ムカつくもん。
遥琉の全部がムカつくもん。

かっこよくなってることも、女の子の扱い方を覚えたことも、私のことはなんとも思ってないことも、全部全部、ムカつくから。

「あ〜、もしかして……」

突然、遥琉の匂いが再び鼻をかすめたかと思うと、

「ちょ……」

すぐ真横に彼の顔が近づいてきてて息が止まりそうになる。

な、何よ、これ。

長いまつ毛にスッと通った鼻筋。

こんなの、顔だけは綺麗だと認めざるを得ない。

「なに」

動揺してるなんてこれ以上バレたくないから、今度は目を逸らしたりせず、強気な返しをする。

「羨ましかった?キスしてるの」

っ?!

「はっ、バカじゃないの」

そう言ってすぐに顔を正面に直して目を逸らす。

なにこいつ。

久しぶりに話しかけてきたと思ったら、そんなアホなことしか言えないわけ?!

ちょっとモテるからって調子に乗りすぎでしょ?!