「座れば?30分ずっと立ってるつもり?」
「……っ、」
チラッと彼を見れば、ジッとこちらを見ていて私が座るのを待っているかのよう。
あぁ、もう。
なんでよりによって遥琉と閉じ込められなきゃいけないのよ。
言われるまま、私は遥琉からだいぶ距離を置いてエレベーターの隅っこに腰を下ろす。
疎遠になっていた7年間だって確かにエレベーターでふたりきりになってしまうことが数回あった。
でも、この箱の中でふたりきりになることなんて数秒。
今までのその回数を合わせても3分もないんじゃないかと思うほど。
それがまさか、1回で30分もの長さになる日が来るなんて。
「バイト、いつもこれぐらいに終わるの?遅くない?」
「……いや、今日は特別」
普段ならとっくに帰ってる。
今日はいろんなことが重なってしまって……。
「あー男か」
「はぁー?!」
いや、店長は男だけどさ!男っていうかクマだし!なんなのその言い方!
言い方が鼻についてつい声が大きくなってしまった。
「私は遥琉みたいに暇じゃないの!いろんな子とベタベタするような人と一緒にしないでよ」