「帰り、遅くない?」

「えっ……!」

突然話しかけてきた遥琉にびっくりして大きく反応してしまう。

「夜道に女の子ひとりは危険でしょ。もう11時だよ」

なにそれ。
私のことなんて少しも『女の子』なんて思っていないくせに。

「別に……バイト先近いし」

「へーバイトしてんだ」

棒読み。
興味ないくせに、いちいち反応しなくていいよ。

遥琉の口から『女の子』というワードが出てきて、ふと、昨日見た光景を思い出す。

そういえばこいつ、このエレベーターで、女の子と……。

遥琉の大きな手が女の子の頬を覆って、ふたりの距離は完全にゼロで。

思い出しただけで、顔が熱くなって心臓が痛い。

あんなことするやつと、私、今一緒にいるんだよね。

無理、破廉恥すぎる。

ってか、自分だってこんな時間までどこ行ってたのよ。

あぁ、そっか。
『女の子』のところね。