どう接していいのか全然わかんないんだ。
『はい、こちら◯△管理センターです』
ん?!
遥琉が押した非常ボタンの横のスピーカーから女性の声がする。
「すみません、エレベーターが急停止して閉じ込められてしまったんですけど……」
押した非常ボタンは、エレベーターの管理会社に繋がっていたらしくて、目の前の彼はスマートに向こうの人と会話をしてる。
なに。遥琉、なんでそんな冷静なの。
なにかと気に食わない。
私の知ってる遥琉は、嫌なことがあるとすぐ目を真っ赤に充血させて涙を我慢しながらプルプル震えてる遥琉だ。
こんなの遥琉じゃない。
誰だ貴様。
私のこの荒れ狂った気持ちをよそに、淡々と向こうとやりとりする遥琉。
すぐ目の前に見える、首筋とか、襟足とか。
大きくなった背中、長い腕。
こんな間近で彼の変化を見たことなかったので、さらに動揺してしまう。
絶対違う人。
だけど、その瞳だけは、確実に遥琉だから、悔しい。