「何バカな事を…」

「アンタだって一人しかいない。アンタだって、生きてるだけで価値があるんだ。」

「違う、俺は跡取りになるために産まれたんだ…跡取りにならなきゃ価値なんかない!」

どうしてなのかわからないが、俺はこの男を気の毒に思い始めていた…

あんなに恐れていた男なのに

実際はひどくちっぽけな生き物の様な気がした…

「じゃあ跡取りになれば、お前は満たされるのか?」

「当たり前だ!本来あるべき姿なんだから、当然だろ?」

「じゃあ、跡取りになればいい…」

「何だと?」

「それでお前の気が済むなら、なればいい…」

「今更なれるわけないだろ?俺は犯罪者だぞ?」

「じゃあお前はこれから一生自分に価値がないと思って生きていくのか?跡取りになる人間を羨んで憎んで生きていくのか?
それこそ、創造の無い、価値のないつまらない人生だな!」

「うるさい!お前に何がわかるんだよ」

「じゃあ何で俺の所に来たんだよ?俺がもし跡取りになっていて、俺がお前に自慢してたらお前はどうしたんだ!?」