「それだけ?」

叔母さんと私の声がシンクロした

「…こ、これだけ」

「他は?」

「これだけ」

思わず全員がため息をついた

「姉さんは緋色に伝えたくないってことなのかしら!」

叔母さんが痺れをきらしながら、みずみずしい桃を剥き始める

「…伝えたくない?父親を?」

私が叔母さんに聞くと、頷きながらつまようじに桃を差して私に渡してくれた

「で、これは?」

小さい箱の中から、遺書の他に緋色名義の通帳と印鑑

「い、一千万!?」

「生命保険がおりた分よ…。三條さんに渡したらいらないって断られたから、そのまま貴方に渡すわ。良かった〜、これでスッキリ!大金を持ってると心配で心配で…」

「どうしよう…家が買えるな…」

「そんな事より、結局解らない場合どうしたらいいの?」

「…母さんは隠したいのか?」

「じゃあ、第三の男?」

「やめろよ!そうしたら手がつけられねーよ」

「嘘、嘘…」

「困ったわね…」

「やっぱり、逢坂さんとやらに聞くしかねーな…」

緋色が力強い目で正面を睨んだ