じっと見られているのを直視できず、視線をキース家の屋敷に戻しながら、王子と会話する。
「ジンには、少し前までお世話になってて…。」
「そうだったな。カナヤに送ったんだった。」
口ぶりからして、ジンに命じたのは王子のようだ。
「今も王子の側近なんですよね。…私てっきり辞めているのだと。」
「…まあ、むやみに俺の名前を出さないようにしていたんだろうな。」
…そっか。
そういう配慮だったのか。
やっぱり、ジンは仕事できる人だ。
「それより、王子って呼ぶのはやめないか?」
急な話題に理解するのが少し遅れる。
「…でも、第二王子、ですし…。」
「イオで良い。」
私なんかが王子を名前で呼ぶなんて、と思う一方で、王子と呼ばれるよりも、名前で呼ばれる方が嬉しい気持ちも分かる気がする。
「………イ、」
なかなか難しくて、力を込めるように拳を作り、隣に立つ王子を見る。
「イ、オ様。…………え、イオ様、それ。」