「あの家の子だと分かって、お家まで送ろうとするけれど、貴方は楽しそうに庭を走り回ってた。」
「……申し訳ないです。」
恥ずかしい……。
「うふふ、可愛いじゃない。イオはそんな子じゃなかったし、イオの兄も大人びた子だったから微笑ましかった。」
「その後はすぐにトレスご夫妻がお迎えに来たんだけど、貴方が『また来るねー!』って。それでお母様も私に気を緩めてくれたのかな…。お母様と一緒に何度もうちに来てくれたわ。」
「娘ができたみたいで嬉しかったなぁ。」
国王様が満面の笑みでそう言うから、なんだか照れてしまう。
「イオとも遊んでたの。記憶にないわよね?」
「え、……そうなんですね。…すみません。覚えてないです。」
思わず、隣に座っている王子にも頭を下げる。
「謝ることない。皆小さい頃の記憶なんてほとんどないだろう。」
「あら、貴方ははっきり覚えているんでしょう?あの里に毎年行ってたのはイオが7歳の時までだったけど、『あの子に会える?』って里に行く度聞いていたじゃない。」
言葉が出ず、王子を見ると、若干顔に赤みが出ているような…。
まさか、本当に…?
何も言わず、運ばれてきたお茶を飲んでいる。