「でもね、私がしつこく貴方のお母様に話しかけちゃって…。」



その言葉に驚いて王妃様を見上げれば、その時のことを思い出しているのか、優しく笑っていた。




「貴方のお母様はとても優しい方。しつこい私に戸惑いながら丁寧に対応してくれていたわ。邪険に扱っても良かったのにね。」


「そんな、…王妃様にそんなことは。」


「うん。多分、気づいていたのかな…。隣国の王族だって。」





懐かしむ王妃様の隣で、国王様も目を閉じて口元には笑みを浮かべている。






「仲良くなったきっかけは、貴方がいたから。」



えっ?


「あの年は、たぶん貴方が3歳の時。貴方が1人でお家を出てしまって、うちの庭に迷い込んでいたの。覚えてないわよね?」



「はい…。」


ふふっと笑って、王妃様は私の手を引いてソファへと連れて行った。

過去を思い出そうと記憶を辿っている私には、使用人さんにお茶を頼む王妃様の声が耳を通りすぎる。



そんな昔にウィザリア家と関わりがあったなんて…。