「まさか……話したのか?」



「ええ、何か問題でも?」



挑発的にさらりと言ってのける田丸に振り下ろしそうになる拳を押さえ、ただ睨みつける。



促されるままに順番が来てしまい、紙袋を片手にしてもそこから動く事が出来ない。



詩織が姿を見せない訳は……間違いない。それを知ったからだ。



「いいじゃないですか、山内さんは復帰して、結局貴方も会社に残ってるみたいだし……願ったり叶ったりで羨ましいですよ」



それだけ言うと、田丸は立ち去った。



「俺の願いは……なんにも叶っちゃいないって」



弱々しく呟いた所で、そんな声は誰にも届かない。