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「でね~聞いてよ~。私、一生懸命話しかけてるのに、全然話してくれないの」


「分かった分かった。ところでこの話、もう十回目だけどまだ続ける気?」



お昼休み。



私は隣のクラスの一組へとやってきていた。



私の目の前で鏡を入念にチェックし、前髪を直しているのは坂巻唯奈(Sakamaki Yuina)ちゃん。



以前少し話したと思うのですが、私の唯一のお友達なのです。



小中高と一緒で、世間的に言う幼馴染で。



私が新婚旅行へ行ってる間も、ずっとメールのやり取りをしていた。



唯奈ちゃんは楽観的というか、サバサバし過ぎているのか。

メールで私が泣きついた時も「大丈夫」とか「なんとかなる」しか返してくれなかった。



うん……まぁ、それが唯奈ちゃんなんだけどね?



……せめて唯奈ちゃんと一緒なら、クラスでも楽しく過ごせたのに。



唯奈ちゃんは唯奈ちゃんで、クラスとすごく馴染んでるし、友達もいっぱい出来たみたいだし……?

正直ちょっぴり嫉妬してる。



「う~やっぱり私も一組がいいよぉ~!クラス替えの申し立てでもしてみようかな!?」


「うん、やめときな。そんなことしても無意味だし、馬鹿がバレるから」


「えっ、バカ…!?」



ちょっとちょっと唯奈ちゃん……!

いくら成績は唯奈ちゃんのほうが上だからって、私をバカと決めつけるのはよくないと思いますよ……!?



フンッと鼻の穴を膨らませる私と、今度は口紅を塗り始める唯奈ちゃん。