「斎宮くん、体温計だよ」



なるべく優しい声で、落ち着かせるように。



斎宮くんが体温を測っている間に、頭の下に氷枕を敷き、おでこには冷えピタを貼る。

汗を掻いている首筋などをタオルで丁寧に拭いてあげた。



「これ、私の常備薬なんだけど、解熱作用があるから。水置いておくから、あとで飲んでおいてね」


「分かっ、た」



ピピピッと音がし、斎宮くんから体温計を受け取る。



「38度9分……。よく、こんな熱で学校きたね……」


「……うるさい」



悪態つく割には、かなり辛そうだけど。

とにかく今は安静にしてるのがいいよね。



どこか遠くで朝のHRを告げるチャイムが聞こえた。



……先生にはあとで事情を話しておこっと。



「ちゃんと寝て、早く熱下げてね」


「……ん」



ゆっくりと目を閉じ、徐々に意識を飛ばし始める。



私がここにいたら気になって眠れないかな。

……でも、まだ顔も赤いし心配だしな。



斎宮くんもなにも言わないし、もう少しだけいようかな。



それから三十分。

私は、斎宮くんの呼吸が安定するまで、ベッドのそばを離れなかった。