夢ヶ丘高校のあの古ぼけたトイレで、変わり果てた姿となって発見されたのだ。

杏奈ののどには、小さなナイフで刺したようなあとが残っていたが、凶器は不明で犯人もまだ捕まっていない。

しかし、勇吾だけが知っていた。

犯人――それはあの一連のおぞましい呪いをかけたあいつ……赤ん坊に違いない、と。

あの時、一花の腹に入り、成仏したとばかり思っていたのに……甘かった。
あいつはまだあの古ぼけたトイレに息をひそめるようにして隠れていたのだ。

杏奈を失ってから、勇吾の世界はくすんでしまい、色を無くしていた。

想いを告白して、少しずつ一緒に進めると思っていたのに。

――これ、お守り代わりに、ずーっとつけておくからね。

はにかんだ笑みを見せながら、勇吾が小学生のときにプレゼントした十字架のネックレスを見せてくる杏奈の姿を思い出すと、胸が苦しかった。