今の紗那は奏介に涙を見られたくはなかった。
ふんばって頑張ってきたのに、再会したばかりの奏介に涙を見られることも、励ましの言葉をかけられることも、今の紗那には逆効果だと、奏介はわかっている。

片づけをする奏介の後ろ姿をそっと見つめながら紗那もそんな奏介の気遣いに気づいていた。


奏介にどんな言葉をかけられるよりも、奏介の気持ちのこもった温かい料理が心に染み込む。

鼻をすすりながら涙を拭い紗那はトマトパスタを完食した。

「ごちそうさまでした」
紗那はきれいに完食した皿を持ち厨房の奏介の元へ向かった。
奏介は翌日の仕込みをしている。

「おそまつさまでした」
紗那の手から奏介が食器を受け取る。
「ついてる」
そう言って奏介が紗那の頬に触れる。