「七星くん……ごめん……」


「赤城さんが謝ることじゃないよ。
 今思えば、その通りだと思うよ。

 だって、
 一颯先輩に言われたくらいで、
 赤城さんのことをあきらめようって
 思ったんだから」


「2回目は、
 お弁当箱を返しに赤城さんの家に行った時」


 それって、あの日だ。


 カラスにあげようとしたたこ焼きを、
 七星くんがパクっと食べてくれた日。


「たこ焼きのお礼に、
 イチゴミルクを4個あげたでしょ。

 底に、今と同じように
 俺の思いを書いたんだ。
 『すきです』って」


 え?

 全然……気づかなかった……


「ごめんなさい。
 私、気づかなくて」


「謝らないでよ。

 どうしても自分の気持ちを
 伝える勇気がなくて、
 こっそり書いた俺のせいだから。

 それでも、
 渡すときにすごくドキドキした。
 もしかしたら、気づいてもらえるかもって」


 七星くんが
 たこ焼きをパクっと食べてくれた時は、
 両思いだったんだ。


 その日だけじゃない。


 小5の頃から、
 お互いひそかに思っていたなんて。


 私がもっと早くに
 自分の気持ちを七星くんに伝えていたら、
 今頃、私の隣で
 笑ってくれていたのかもしれない。


 天の川が描かれた浴衣を着て、
 一緒に花火大会に
 行けていたのかもしれない。


 でも……


「一つ聞いてもいい?

 赤城さんさ、俺のお弁当を食べた後から、
 態度が変わったよね? なんで?」


 
「私が入れたメッセージカードに、
 七星くんが返事を書いてくれたでしょ?」


「え? 
 メッセージカードなんて、俺、知らないよ」


 嘘?


 私、確かに見たもん。


 何度も何度も見て、
 さんざん泣いたんだから。


「なんて書いてくれたの? そのカードに」


「…………七星くんは、
 好きな人いますか?って」


「え? え? 俺、本当に知らないよ」


「でも、お弁当箱を返してくれた時に、
 そのカードも一緒に入っていたよ。
 『クルミ』って書いてあった」


「それを書いたのは、俺じゃない。

 だって俺、
 赤城さんとお弁当を交換するのが
 夢みたいで浮かれていて、
 前の日の夜からお弁当の準備をしていたし。

 誕生会の時だって、
 赤城さんと二人だけで話せるタイミングを
 ずっと狙っていたし。

 お揃いのものを身に着けたいって
 思っちゃって、
 星のネックレスを買っちゃったし」


「じゃあなんで、
 クルミちゃんと付き合ったの?」

 七星くんは、陰りがある瞳を私に見せた。