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春の陽気を知らせる様な、良く晴れた三月下旬。

勝手口から少し歩いたところに、4人並んでお屋敷を囲む高い塀を見上げる影があった。

そこに現れた、猫背がちの男性二人。

「ちょっと聞いてよ。おじさん、マル対に見つかったんですけど。どうなの、探偵として。」

「可愛いかったぞ。」

「や…可愛い云々はいいとして、それさ、洒落んなんなくない?あ~!俺、説明しなきゃなんないじゃん!依頼者に。」


一人だけきちんとスーツを身に纏った男性が眉を下げて苦笑い。


「頼んだ、相棒」


それを一言で片付ける、猫背がちの男性の一人。


「ねえ!どんな感じだったの?」


一番背の高いスラッとした男性が黒めがちな目を輝かせた。



「ん~…メイド服がよく似合ってた」

「あ、それは俺も思った。まさにメイドって感じでね。」


キャップを被っている男性がそれを外して少し伸びをする。


「ふ~ん、誰かさんとは大違い…。」


それを受けて、力強い眼差しを有した男性が、隣に居た唯一の女性の頭をポンって撫でた。


「……。」


それに何も言わず睨み返すその女性。


「大丈夫だよ!俺はメイド服姿が微妙でも全然気にしない!」


スラッとした男性が明るくそう言ったら


「出た、フォローになってない、優しさ。」


スーツの男性がまた苦笑い。


「俺は踵落としする女子のがメイドより好きだぞ。」

「おじさん、そのフォローもどうかと…。」


キャップを被り直した男性も苦笑いをしたら


ドコッ!


少しだけ辺りに響く鈍い音。


それと共に、お腹をおさえながら少し屈んで「ぐっ」って一瞬声を出す眼差しの強い男性。


「いきなり腹に拳入れんな!」

「ごめん、ハエが止まってたから」


女性がニッコリ笑いかけたら、ムキになる。


「はあっ?!お前ふざけんな!」

「うるさい!」

「あ、怒られた!」


今度はスラッとした男性の笑い声が辺りに響いた。

そんなやりとりをスーツの男性は優しい眼差しで見守ってからゆっくりと口を開いた。


「…じゃあ、依頼主に会って来る。」


他の五人はそれに微笑みと少しの悲しさの表情を返す。



“微笑み”は、依頼主へ会いに行くスーツの男性への信頼の証。



“悲しさ”は…運命に翻弄されていくであろう対象者への思い入れ。



5人とも…そして俺も。
それぞれ背負って来たモノがあるからこその表情だ。


受け止めた方のスーツの男性は、そんな想いを抱いた。