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「今の人、専任秘書の上田さんだよ。」
車が出発し、隣に並んだ圭介さんがぽつりと呟いた。
「瑞稀様が社長に就任してからだから…俺より長いかもしんない、瑞稀様の傍らに居る時間。」
「そう…ですか。」
瑞稀様の隣がえらく似合う女性だったな…
スラリとした手足に女性らしいボディライン。それを強調するわけでもなく、隠すわけでもない、ジャストサイズのスーツを身につけて。笑顔がこの上なく上品で、私も笑顔を向けられ、悪い気は全くしなかった。
……出来れば居合わせたくなかった。
同じ空間に居るのが恥ずかしい…と思った。
「素敵な女性ですね…上田さん。」
「まあね。でも好みの問題だから。」
唇の片端をキュッとあげる圭介さん
「瑞稀様にとっては仕事上の良きパートナーなのは間違いないけどね。それ以上でもそれ以下でもなく。」
「仕事上の…。」
「そ、仕事上の。」
……私はどうなんだろうか。
『それは、メイドとしてなの?』
前にネクタイを結ぶ話をした時そう言われた。
と、言う事は『私自身』を少しは求めてくださってるのかな。
「……。」
上田さんの綺麗な笑顔が頭に残り、消えない。
あんなに綺麗な人が『仕事上』でこんなにちんちくりんな私が…『私自身』。
そんな事ってあるのかな……?
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