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…なんだ?


朝、まだ霜が降りてる様な早朝。欠伸まじりで植木の剪定の為に門に行ったら、咲月が一生懸命に掃除をしていた…のはいいんだけどさ。
いまいち…覇気が無い?何か、生気を吸い取られた的な感じでふらふらしているような。


「おはよ。」
「うっ!涼太さん!おはようございます。」

反応が変過ぎるだろ。なんだよ、「う!」って。

そういや、昨日の夜、圭介から『瑞稀の部屋に近づくなよ』ってメッセージがあったな。
そして、咲月のこの感じ…もしや。

心の奥から笑いが込み上げて、頬が緩むのを慌てて抑えた。

普通にしないとね、こういう時は。

それでも探りを入れたくなんのが俺の性分。


「随分疲れてんじゃん。昨日張り切り過ぎた?」
「張り切っ?!そ、そ、そんな事無いです!もう、全く!!」


「今日は何か温かいですね」なんて引きつった笑いで掌で真っ赤になった顔を仰いでる咲月。


それが若干嬉しそうな表情に見えて、瑞稀と話せて、良い方向に行った事を期待させてくれる。

これで瑞稀も少しずつ気持ちが和らいで行くかな…と、一息ついて、ふと昨日の夕方、俺宛に届いた一通の手紙に思いを巡らせた。


俺や圭介も、瑞稀を“寂しさ”からすぐにでも解放してあげたいと思ってる。けれど、俺達じゃどうにもならない事情があるからね…。


咲月と気持ちが通じ合った事で少しでも埋ってくれてるといいよな、瑞稀の心が。


「ああ、そうだ。今朝はさ、ガーベラが綺麗に咲いたんだよ。」
「ガーベラ…ですか?」
「今、温室来れる?」

首を傾げてる咲月を温室へと促すと、一番大きく花を咲かせてるガーベラを一輪、その頭に挿した。それを嬉しそうに少し触って確かめる咲月。


「先にお屋敷に戻ります」


そう言って頭をさげて去ってく。その後ろ姿を見送り強く想った。


“瑞稀を頼むよ咲月”と。


不意に手を置いた作業台の上で、白い封筒がカサリと揺れる。

…今晩、瑞稀、帰ってくんのかな。後で圭介に確認しないと。
“これ”を瑞稀に届けないとな…。