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裏庭の花の植え付けを終わらせて、温室に戻って来たら、その奥の倉庫の裏に、人影があるのが見えた。


行ってみたら、膝抱えて座り込んでる咲月の姿。


「…珍しいじゃん。サボり?」


俺の問いかけに、ビクッとその身体を揺らした。


「涼太さん…」


無理矢理作った笑顔。頬には涙の筋が出来ている。

さっき出掛けた瑞稀もちょっと様子が変だったんだよな…。
二人の間で何かあったか?


そんな事を考えながら隣に腰を下ろした。


「坂本さんに見つかったら大目玉じゃないの?」
「……。」


俯かせた咲月の睫毛が湿り気を帯びている。


「あのさ…瑞稀だけど。」


敢えてその名前を出したら、肩が少しピクリと揺れた。

やっぱ何かあったな、瑞稀と。


「圭介の話だと、今日、瑞稀はまた戻らないみたいだよね。」

「……はい。」

「戻んのは確か…明日の夕方だっけか。」


だいぶ冷え込みが厳しくなってきたここ最近、夕方のこの時間になると、話す度に吐いた息が白く形作る。それが消えゆくのをみつめてから立ち上がった。


「つーわけで、明日朝9時にここ、集合ね?」

「え?」


言った俺に、咲月は驚きの表情を向ける。


「俺とデート。咲月、休み貰って?」

「や、あ、あの…」

「…不満?あ、もしかして、瑞稀じゃなきゃ嫌とか。」

「え?!あ、あの…そう言う事ではなくて…。私、一昨日お休みを貰ったばかりで…。」

「じゃあ俺が圭介と坂本さんを口説けたらって事で。」


まあ…口説けんのは始めから決まってんだけどね。
さっき会った時、坂本さん、すげー心配してたから。


『咲月ちゃん、少し様子が変なのよ…
涼太君!ちゃんと元気づけてあげてよ!』

『何で俺なんですか…』

『そんなの、オバサンが話聞くより、イケメンが話聞いた方が良いに決まってるじゃない!』


豪快に笑ってた坂本さんを思い出したら何となく頬が緩む。


歴代のメイド、殆ど坂本さんの仕事ぶりについていけなくて、うまくいかずに辞めてってんのに。凄い気に入りようだもんな、咲月の事は。

大したもんだよ、咲月は。