圭介君に頼んであの子呼び出してもらって、瑞稀の事、色々話したいなって思っていたのに。


コンコン


「失礼致します。」



入って来たのは坂本さんだった。


「申し訳ございません。鳥屋尾は今、他の仕事に当たっておりまして…私が代わりに伺いました。
それに、今日は、二人は初対面。小夜子様にご迷惑をかけてしまうかもしれませんので。」


その後ろからは、ワゴンを押した伊東さんが入って来た。


「…別に良かったのに。私の事は最後で。」


咄嗟に笑顔で取り繕った。


「初めてだから、話をしてみたかったっていうだけなので。そんなにお気遣い頂かなくても。」

「そうでしたか。では、また明日にでも、鳥屋尾をよこす事に致しましょう。」


柔らかい所作で、私の前にハーブティーを置く伊東さん。


「今日は私も小夜子さんと久しぶりにお会い出来て懐かしくて嬉しかったので、ご容赦くださいね?」


坂本さんが、数枚のパジャマをクローゼットから出して来た。


「いや、相変わらず、小夜子様はお綺麗ですね。」


変わらず楽しそうに笑う伊東さん


それに

「そうですね」と反応する坂本さんも満面の笑み


…思ったより私、歓迎されてる?



「ねえ…もう今日は瑞稀に会えないのかな。」

「そうですね、たくさんの仕事をお持ち帰りになられたそうですから。」

「…そっか。」


口につけたハーブティーが昔懐かしい少し甘酸っぱい香り。


『小夜はいっつもそれ飲んでんね。』

『だって!伊東さんの入れてくれるの、家で飲むハーブティーより断然美味しいんだもん!』

『ふうん…まあ、じゃあ、毎日飲みにくれば?』


脳裏によぎる瑞稀の笑顔。


湯気のせい…かな。

目頭が熱くなって、鼻が少しツンとした。


”求めてない”…か。

…ひどいよ、瑞稀。
私の事、置いてけぼりにして。


『俺とずっと一緒に居りゃいいでしょ?』


そう言ってくれてたのにさ。