そして、私のアパートが見えてきた。


「あ…あそこ、緑の壁の、私のアパートだよ」


「あー…そっか、じゃぁこのへんで」


「うん、送ってくれてありがとう」


「うん…目ちゃんと冷やせよ?」


「うん…そうだね」


「鍵…あるよな?」


「あーははっ、うん…あるよ」


鍵の話なんて、だいぶ前のように思える。


本当に、小林くんがいてくれて良かった。


「じゃぁ…おやすみ」


「うん…おやすみ」


私達は軽く手を振り合い、お互いに背を向けた。


アパートの階段を上って部屋の前に行くと、もう小林くんの姿はなかった。


小林くん…。


"俺は…今の早瀬も好きだな…”


バカッ…なに思い出してるの?


私は頭を左右に振り、鍵を取り出し部屋の鍵を開けて中に入った。


"人として…”


本当に…それだけなのかな…。