そして大学を卒業して、この春から私は社会人になった。
--6月--
「うぅ…どうしよう…」
そう小さく呟きながら、私は口元を押さえた。
金曜の夜、友達と飲んだ帰り、電車に乗った私は、飲み過ぎたのか、気持ち悪くなっていた。
座ってはいるけど、揺れがちょうど気持ち悪さを悪化させていた。
ヤバイ…でも次の駅だし、もう少し…もう少しの我慢…。
着いたら、少し駅で休もう…。
そう思って目を閉じようとした時、目の前に人が立った気配がした。
ゆっくり目を開いて、口元を押さえながら顔を上げると、スーツを着た若い男性が吊革に掴まって私のことを見ていた。