そんな彼女に、氷よりも冷たい瞳を向けてにじり寄る。


「警察沙汰にはしないとしても、あなたがしたことを許すつもりはない。俺たちを監視して、花乃を危険にさらそうとした。どう落とし前をつけてもらいましょうか」

「あ、あなたたちだって……! 偽りの恋人を演じてたってその女がはっきり言っていたわ。私に嘘をついて、精神的に苦痛を与えたんだから同じよ!」


苦し紛れに喚く彼女に心底呆れ、「戯言を……」とため息交じりに呟いた。

だが確かに、あの日嘘をついたことは事実。自分の尻拭いはしなければいけないな。

どうするか瞬時に考え、背後に隠していた花乃の肩を抱き寄せた。くいっと顎を持ち上げれば、大きな瞳がさらに見開かれる。

その唇に、俺のものだと覚えさせるように口づけた。

目の前で熱烈なキスを見せつけられ、美香は絶句している。俺がここまで品性に欠ける男だとは思わなかっただろう。

ゆっくり唇を離し、キスの衝撃ですっかり恐怖が消えた様子の彼女に、真剣に告げる。


「俺は心からあなたを愛している。とっくに偽りなんかではなくなっていた。……花乃は?」


本心を伝えると、彼女は頬の血色を十分すぎるほど取り戻し、眉を下げて口を開く。