一瞬だったけど、触れた唇は柔らかくて、シトラスのいい香りがした。




「………は?」



茫然とする私の顔を、イケメン転校生が悪戯っぽく口角をあげて覗き込む。




「なに?まさかハジメテってわけじゃないでしょ?」



「……っ!?」




我に返った私はベンチから立ち上がってズササッ!と後ずさる。





「な、な、な…!?」





パニックになる私を感情の読めない笑顔を浮かべたまま見つめるイケメン転校生。





そりゃハジメテじゃないけど、渓渡と何回かしたことあるけど、まぁ最近はあんまりしてないけどっ…




…っていうか見られた!?





渓渡を振り向くと、渓渡は驚きに満ちた表情で私を見ていて、でも私と目が合うと、眉間にグッと皺を寄せてフイッと顔を逸らした。





かっ…



完璧に見られたー!!!