ハヅキの目が一瞬僅かに見開かれた。
でもそれは、ほんとに一瞬で。
「…へー?」
すぐにいつものニコニコ笑顔。
「そうなんだ?」
「そ、そうだよ!」
「…それホント?」
「…ほ、ホントに決まって「お前じゃねーよ」
お前!?
ハヅキの色素の薄い瞳は、私のもっと、後ろを見ていた。その視線を追って振り向くと。
「ほんとだけど?」
いつの間に起きてたんだろう。頬杖をついた京星くんが、面倒くさそうにこっちを見てた。
ごめんね京星くん、こんな茶番に付き合わせて…!心の中でそっと詫びる。
昨日、トイレの前でハヅキとのことを正直に話した。
保育園時代のこと、ハヅキに恨まれてること、そして無理やり彼女にされてること。
ハヅキから離れたくて、逃げたくて、もし私に彼氏ができたら無理矢理彼女っていうのは諦めてくれるんじゃないか、と思って京星くんに頼んだんだけど。
「やっぱ無理だよねこんなこと…」
京星くんには百害あって一利なし、ってやつだ。
諦めて教室に歩き出そうとしたら、
「…いや」
今度は反対に、京星くんに引き留められた。
「別に。無理じゃないけど」