「そっか。」
丁度家の前に着き、じゃあ、今日はありがとうと手を振ろうとすると伶くんは待って!と声をあげた
「えっと、これ。今日のお礼」
『え?』
袋を差し出され開けて?と言われたので袋を開けた。
『え?これ…、私が見てたやつ』
私が今日可愛いと思って気になっていたイヤリングだった
「ずっと見てたから欲しいのかなって思って…。今日のお礼だし、貰ってよ」
『嬉しいけど…、私なにも買ってないよ?』
「お礼って言ってるじゃん。」
だから受け取って?と言わんばかりに伶くんが私をじぃーっと見つめた
『あ、ありがとう。』
素直に受けとると伶くんは嬉しそうに笑った
「じゃあ、またな」
そう言って帰っていった
その背中を見つめながら一人家の前にたっていた私は
『こんな格好いい事されたら誰でも惚れちゃうよ…』
ポツリと泣きそうになりながら呟いた
自分の部屋に入り、あのストラップは一体誰にあげるのだろうと考える。……、きっと彼女だろうなと思って悲しくなった
デートって言ったのは彼からしたら女子と出かける事自体を指す言葉だったんだろうし。手を繋いでいたのはなにかとどんくさい私がどこかに行かないようにだったんだろうなと思った
『…、私、単純すぎでしょ。どうするの、好きになって…』
望みのない恋なんてするもんじゃない。だって悲しくなるから。
あんなに真剣な表情で沢山迷ってたなー。羨ましいな伶くんの彼女
顔も見たことない彼女に嫉妬する
こんな事考えてたって伶くんが振り向いてくれる訳じゃないって分かっていても考えずにはいられなかった
伶くんに貰ったイヤリングを眺めてこういうことは彼女以外にはやっちゃダメだよと思いながらも宝物入れにしまった
愛美を家まで送って電車で帰る途中重い荷物を見て倉庫によってこのお土産を置こうと決め今日は全員いるはずだよなと考えながらそのまま倉庫の最寄りの駅で降りた
駅から倉庫までは少し距離があるし、荷物も多いのでタクシーを拾って倉庫の付近まで乗っていった
『あいつら、喜ぶんだろうな』
倉庫にいる面子達が喜ぶ様子を想像して少し笑う
そうこうしてるうちに倉庫に着きいつも通り俺に気づいた奴らが副総長こんにちは!とか伶さん、こんにちは!とか声を掛けてきた
そんな可愛い面子達にお土産コーナーで買ったお菓子を渡し土産だと行って幹部室に上がった
まぁ、面子達は伶さんからのお土産だ!!と想像通りの反応で笑いそうになるのを耐えながら幹部室のドアを開けた
予想通り、全員揃っていて美玲は俺を見るなり疑問をぶつけてきた
「どこ行ってたの?」
『…、水族館?』
「へぇ?伶にしては珍しい所行ったんだね」
『…、あぁ。美玲、これ』
最後に選んだストラップを美玲に渡した
『え!わー、可愛い』
早速袋を開けて中身を見た美玲が声を上げる
咲に私のは?と詰め寄られるが美玲の分しか考えて無かったし、そんなもんあげた日には陣に睨まれるから正直にないと答えた
俺の答えに陣が安心したような顔したの俺は見逃してないからな?
「うーん、このストラッどこにつけようかな…」
美玲はマイペースにあげたストラップを付ける場所を探してた
まさかこのストラップで愛美が勘違いしていたなんて思いもしなかった
「あ、そういえば…」
もう一つ袋を取り出してみんなが見えるように置いた
咲はさっき俺が美玲に買ったような土産はないって言って拗ねてたが俺の声に顔を上げた
『これは、みんなでお揃い』
愛美に買ったイヤリングの隣にピアスもあってそれを幹部でお揃いにしようと買って来た
「わ、可愛い…」
魚をモチーフにした可愛らしいデザインのピアス
ここの幹部は揃いも揃って可愛いものが好きなのでこれにした
『だろ?』
咲はピアスを見て機嫌を直したようで上機嫌で今まで付けていたピアスを外して付けていた。それは、陣も湊もで。が、一人だけ未だにストラップを付ける位置を探している美玲は美玲にとって第二のお土産にすら気づいていない
「あ!そうだ!」
終いには幹部室を出て自分の部屋…つまり総長室へと姿を消した
「美玲、いらねぇのかな?」
陣がピアスにすら目を向けない美玲を見ながらぽつりと呟いた
「よし!」
数分後そんな声と共に持ってきたのはスクバだった
「ここに付けたよ!」
『そんなに嬉しかったのかよ』
「うん!だって伶からのプレゼントだもん!」
うわ、我が姉ながらその笑顔の破壊力は半端ねぇって…。湊なんか顔は勿論首まで紅いぞ?
『そりゃ、良かった』
嬉しそうに笑う美玲に俺まで嬉しくなった。
あ、ピアスはその後ちゃんと美玲の手に渡った。
次の日、愛美にお礼のメールしてなかったなと思ってメールを作成した
”今日は、ありがとう。楽しかった。また今度もデートしてくれるか?”」
どうしても文面だと素っ気なくなってしまう…。今度、湊にでもメールの打ち方聞いてみるか…。
それから、授業中でも愛美からの返信を今か今かと待ち続けたが返信は返って来ず返って来たのは俺がメールしてから丸半日以上が経った頃だった
”伶くんこちらこそ、楽しかったよ、うん、また機会があれば…”
愛美にしては簡素で何かしてしまったかと考える…が何も思いつかない
『俺…、何しちまったんだろ…。』