「私が無理矢理でも引っ張て来た価値はあったでしょ?」



無理矢理だった自覚あったんだと思いながら美玲にも伶にも褒められて少しばかり嬉しくなった



どこか、伶も私が幹部になる事は認めていないってわかってた。だから、そんな伶にも少しは認められたのかと思わずにはいられなかった



そんな様子を幹部室から見ていた存在に私は気づかなかった



そのまま引き連れられるように幹部室へとまた連れて来られた私。そして私をにらむ陣



この空気に耐えられないから面子たちの所に逃げてるのに…。と思いながら大人しく椅子に座った



「あ、私、やる事あったんだった。伶も手伝って」



「……、あぁ、わかった」



双子が目線で少し会話しながら部屋を出て行った



そそくさと幹部室から出て行ってしまった二人の背中を見つめる



残されたのは私と陣の二人だけ。気まずい沈黙が幹部室に続く



「あのさ」



『……え』



まさか、陣の方が先に口を開くと思っていなかった私は驚いて陣の方を凝視してしまった



「なんだよ」



私の視線に気づいたのか気まずそうに私を見てくる



『…、いや』



「あっそ…」



さっきはなにかを言いかけていたのにタイミングを逃してしまったせいでなにも言わなくなってしまった陣



「さっきの、………すごかった」



暫く見ていると視線に耐えきれなくなったのか陣が私を見ずに言う



『え?さっきの?』



いきなりさっきのと言われ何の事かわかってない私に軽く舌打ちして



「さっきの、美玲とのやつ!!すごかったっていんてんだよ!」



キレながらも褒めてくれた



『あ…、ありがとう?』



「…っ~」



それからはいつも通りに戻ってしまったが私と必要以上に睨む事は止めたようだった



少しだけ、ピリピリ感がなくなった幹部室に美玲と伶が戻って来た



「少しは、マシになったみたい…?」



「ホントに少しだけな。」



私と陣の様子を見て感想を述べた二人にやっぱりわざと二人にさせたんだと確信する



「ただいま~」



と元気に入って来た湊はいつもの空気と何か違う事を感じ取ったのか、空気が軽くなってる!とすこし感動していた



「まぁ、これで、一歩前進…かな?」



嬉しそうに呟いた美玲がつぶやいたのだった



私が蝶華に入って数か月。ある昼下がり、陣には睨まれなくなったが進展はそこまでだった



「あ、咲。今、暇?」



『ん?うん』



「暇だったらこれ買ってきて」



欲しいものが書いてあるだろう紙を渡され暇だし別にやる事もないしいいかと快諾した



ここ、蝶華ではほぼないに等しいが奇襲を受けた時の為に二人一組の行動が絶対だった。だから買い物に誰を連れて行こうか迷ってると美玲が陣もだよ!!と声を掛けた



不機嫌そうだが、立ち上がった陣を見てあぁ、来てくれるんだと陣と二人倉庫を出た



買い物が無事終わり帰ろうと公園の前を通った時事件は起こった



「陣!!!」



遠くから陣を呼ぶ女の子の声。私はえ?と思いながらも女の子に視線を向けた



そこにはロングヘア―の可愛らしい見た目の女の子



女の子は陣の腕にすかさず絡みついた



「もー、今までどこに居たの?美奈、ずっと探してたんだよ?」



女の子が陣を見ながら言う



だけど、陣は……。



「……れろ」



「え?」



「離れろ!!!」



尋常じゃないくらい震えている陣。その眼は確かに憎しみが籠っていた



「何で、そんな事言うの?陣は私のものでしょ?」



女の子が悪びれもなくそう言った瞬間私の中でなぜか軽く殺意が沸いた


『さっきから聞いてれば…。』



取り敢えず怯えて震えている陣を女の腕から解放した



「ちょっとなんなのよ!!アンタ!!」



可愛らしい見た目とは裏腹に怒鳴り散らす女の子



『なんなのよ、はお前だよ。陣はお前のものじゃない。』



「じゃあなに?アンタのもんだとでも言うの?」



『違う』



「は?じゃあ、口出ししないでくれる?これは私と陣の問題なんだけど?」



『…、陣は誰のものでもない。陣は陣だけのものだよ。だから、陣が嫌がるなら私は陣を助ける』



「意味わかんない。陣は私のものだって言ってるじゃない。関係ないアンタは引っ込んでろよ」


目の前の馬鹿女に呆れてものが言えない



『てめぇ、いい加減にしろよ。陣は誰のものでもねぇって言ってんだろ。分かれや、それとも、そんな事も分からないほどの馬鹿なのかよ』



ついつい喧嘩腰に言葉を発してしまった私に女の顔が怒りで真っ赤に染まる



「うるさい!!」



私に振り上げられた手そのまま振り下ろされた。そして、パシンと乾いた音が響いたが私に痛みがくる事はなかった



「…てぇ」



だって、私を守るよに立ちはだかって平手打ちを食らったのは陣だったから。



「え?あ…、」



陣を叩いてしまった事で熱も冷めたのか青くなる女



「…、俺の前に二度と現れるんじゃねぇ」



今まで聞いて来た中で一番低く冷たく吐き出された声。



「ひっ、」



女は怯えたよう去っていった



「…、っ」



女の姿が見えなくなった瞬間その場に座り込んでしまった陣。放っておくわけにはいかず、目の前が公園だった事もあり陣にちょっと我慢してと声を掛けると陣を連れて公園へと踏み入れた



人が居ない公園のベンチに陣を座らせ、平手打ちされ赤くなって居る陣の頬を見て何か冷やせるものと思って視線を彷徨わせると自販機が目に入った



自販機で陣の分と自分の分を購入して陣が座るベンチまで戻った