「おー、怖。で、あそこにいるのが海堂陣だよ。女嫌いなんだよね」
『あっそ。そんなに睨まなくたって私ここに入る予定ないから』
私がそういうと海堂陣以外がコイツ何言ってるの?とでも言いたげな視線を投げてきた
疑問に思って藍堂美玲を見るとその疑問の答えが返って来た
「咲、ここは蝶華の幹部室なんだ。ここに居るってことは、今日から咲はここの一員なの。」
『は?』
「要するに、ここの倉庫に連れて来られてる時点で咲は強制的にこの族の一員だよ」
と、笑顔で言った藍堂美玲に軽く殺意が沸いた
『私の拒権』
「そんなもんは存在しないよー。総長の決定は絶対だしね!」
今まで静かだった夕凪湊そう楽しそうに言った
『横暴だ…。』
「だからよろしくね、咲?」
逃がさないぞとでも言いたげな藍堂美玲の笑みに私は疑問を持つ
『どうして、私がこの族に入らないといけない?』
「そんなのあんだけうちのシマで好き勝手暴れてるからだろ。」
藍堂伶が飲んでいたコーヒーを置いて吐き捨てるように言い放った
その言葉に息を飲む……あの町、蝶華のシマだったのか…。と知らなかった事実を突きつけられた
「これ以上好き勝手してもらっても困るから蝶華に入ってよ、ね?」
『……わかった』
コイツらのシマで知らなかったとはいえ暴れていたのは事実。
藍堂美玲の提案を承諾した
「あ、ちなみに咲には幹部になってもらうから。」
『は?それで全員が納得すると思ってんの?』
「そこは心配ないよ!だって咲を引き入れる前に話し合いは終わってるもん!」
にこやかに言う藍堂美玲の言葉は最初から私をここに引き入れる事しか考えてなかったなと私に確信させるには十分だった
『…はぁ。宜しく』
「うん!ふふ、嬉しいな~、私以外の女の子なんて!あ!基本ここは全員呼び捨てだから!」
ニコニコ私の手を掴みながら言う藍堂美玲…美玲
『……わかった』
こうして私が蝶華に入る事が決定した
蝶華に引き入れられてから数週間、私は倉庫に居た
「咲~」
『ん?』
「これさ…」
なんてここ数日ずっと美玲はこんな感じ。湊は夜から朝にかけてほとんどいない。あの人女好きそうだからまぁ、そうゆう事何だろうと思ってる。伶は美玲とよく一緒に居るから美玲と話している時に話す機会が多い。
そして、一番の問題。それは……。
『なんで、無言でずっと睨んでくる訳』
そう問題は陣だった。女嫌いだからと湊は言っていたけど。
「うるさい、喋るな」
「もー、仲間になったんだから…、陣も少しは受け入れてよ?」
「は?美玲が勝手に連れてきたんだろ」
どうやら、美玲とはちゃんと話すようで会話が続いている。まぁ、今は喧嘩腰だけど…。
「うるせぇ!静かにしろ」
こんな時は伶がキレて二人を宥めるのがルーティンだ
『はぁ。私、下行ってくる』
いつまでも女と一緒の空間は陣にとってストレスだろうなと思って幹部室を下りた
「あ!咲さん!!おはようございます!!」
こんな事もここに来てから数度ではないから面子たちとも仲良くなれた
『ん、おはよ』
「咲さん!今日も一緒に特訓してくれません?」
『いいよ』
そうして始まった特訓。これが私の日課になってる
暫く皆と特訓をしていると上から
「咲、そこに居たんだ!私も混ぜて!!」
と、美玲が下りてきた
「わ、総長来た!!」
嬉しそうな面子たち
「咲、手合わせしよう?」
『……いいよ』
「お!まじか!いいもん見れるぜ!!」
美玲と私の手合わせを面子たちが大興奮だった
真ん中だけキレイに開けて掃けた面子たち
「最初、そっちから仕掛けてきなよ?」
『じゃ、遠慮なく』
美玲に先行を譲られたので遠慮なく行かせてもらう
最初に狙ったのは鳩尾。ここに入るとダメージが大きいからね。
だけど、避けられるのも予想済み。だから方向転換をしてすかさず背中を狙った
「お、やるじゃん?けど、甘い」
そう聞こえた時にはの腹に重い蹴りが入っていた
膝をついたが体勢を持ち直して立ち上がるとおぉという声が聞こえた
「おい、そこまで」
いつの間にか降りてきた伶に止められてしまった
「えー、なんでよ」
「放っておいたらどっちかが気絶するまでやり続けるだろ…。それより、咲お前凄いな。」
『は?』
美玲と注意してたとおもったらいきなり褒められて困惑する
「美玲、あの蹴り結構本気だっただろ」
「うん。まさか、まだ立てると思わなかった」
確かにあの蹴りは重かったけど、あれぐらいで倒れてらんない
「私が無理矢理でも引っ張て来た価値はあったでしょ?」
無理矢理だった自覚あったんだと思いながら美玲にも伶にも褒められて少しばかり嬉しくなった
どこか、伶も私が幹部になる事は認めていないってわかってた。だから、そんな伶にも少しは認められたのかと思わずにはいられなかった
そんな様子を幹部室から見ていた存在に私は気づかなかった
そのまま引き連れられるように幹部室へとまた連れて来られた私。そして私をにらむ陣
この空気に耐えられないから面子たちの所に逃げてるのに…。と思いながら大人しく椅子に座った
「あ、私、やる事あったんだった。伶も手伝って」
「……、あぁ、わかった」
双子が目線で少し会話しながら部屋を出て行った
そそくさと幹部室から出て行ってしまった二人の背中を見つめる
残されたのは私と陣の二人だけ。気まずい沈黙が幹部室に続く
「あのさ」
『……え』
まさか、陣の方が先に口を開くと思っていなかった私は驚いて陣の方を凝視してしまった
「なんだよ」
私の視線に気づいたのか気まずそうに私を見てくる
『…、いや』
「あっそ…」
さっきはなにかを言いかけていたのにタイミングを逃してしまったせいでなにも言わなくなってしまった陣
「さっきの、………すごかった」
暫く見ていると視線に耐えきれなくなったのか陣が私を見ずに言う
『え?さっきの?』