待ち始めて数分、私が知る顔が校門から出てきた
『彩、あの人…』
伶くんを見つけて彩に教える
「え…、めちゃめちゃイケメンだね…?」
『あ、あの!れ、…』
伶くんと言おうとしたがそれ以上私の口は言葉を紡ぐことはなかった。だって…。例のストラップを付けている女の子の手を繋ぎながら走ってる姿を見ちゃったんだもん。
「え…、うそ」
私に気づくこともなく数十メートル先を走って行った伶くんと彼女
『やっぱり、居るよね』
一瞬しか見えなかったけど女の子はすごく綺麗で女の私ですら見とれる美人だった
「ま、愛美…?」
『ほらね、私が言った通りだったでしょ?伶くんには彼女が居るって』
最初から分かってたじゃん、なのにどうして涙が溢れてくるんだろう…?
「愛美…。ごめん、私が確かめに行こうなんて言ったから…。」
『彩は悪くないよ、遅かれ早かれ事実は変わらないし。…帰ろっか。ここにはもう用ないし』
「う、うん」
そのあと中々泣き止めない私に彩は私の家に泊りなよと声を掛けてくれた。正直こんな状態で家に帰って部屋に戻ったら一人でずっと伶くんのことを考えてしまうだろうからその好意に有り難く甘えさせてもらった
一瞬愛美らしき人物を見た気がして振り返るが愛美は居ない。当たり前か、ここは俺が通う学校で愛美は別の高校だし、ここからは少し距離がある
『居る訳ねぇよな…。』
「伶?」
『あ?』
「手、いつまで繋いでるの?ブラコンだって自覚はあるけど流石に外でまでずっと手繋いでるほど私重度じゃないよ」
繋いでいた手を離すと後ろを振り返ってまだ来てるわ…。逃げよ?と声を掛けてきたのであった
どうして、俺らが手を繋いで二人で逃げていたのかと言うと、それは数時間前に遡る
数時間前
「ねぇ、美玲、その恰好暑苦しい。」
お下げでぼさぼさ髪を引っ張りながら咲が文句を言い出した。咲がこちらをちらっと見て
「伶もだよ。二人ともここでぐらい外しててもいいじゃん。私達以外入ってくる事もないんだし。」
それもそうだなと思い、暑苦しいウィッグを外した
「やっぱ、そっちの方がいいよ、美玲~!」
美玲に抱き着いている咲はほっておいて朝ぶりの開放感に浸っていた
事件が起きたのは放課後の事だった
放課後、帰るだけだけど一応約束だし後々面倒だからとウィッグを付ける事になったそしてつけようとした。
そう、付けようとしたんだ。
「ねぇ、湊~、ミカねぇ」
あろう事か、女の甘い誘惑するような声と共に湊が空き教室内に入ってきた
湊も俺たちが居た事にビックリしたようだが俺たちも突然の事に固まった。…が俺は何より美玲が心配で慌てて美玲を見るとぎゅっと唇を強く噛んでいた。これは、美玲が小さい頃から見たくないものを見た時にやる癖みたいなもの。
これ以上この空間に美玲を置いておけないと判断した俺は美玲の手を引いてその場を離れた
「え?ちょっと、めっちゃイケメン居る!!!!」
「あの子めっちゃ、美人!!!!」
などと言う声が廊下に出た瞬間響いた、その声に反応していろんなヤツに追い掛け回されもう帰ろうと思ってた事もあり荷物も持っていたので、そのまま門まで二人で走った……という経緯で今に至る
「流石に、もう追って来ないでしょ…。」
校舎の外まで出ると流石に諦めたのか追手を巻くことに成功した
『美玲、大丈夫か?』
「え?なにが?」
……嘘だろ?あんなに傷ついた顔してたのに無意識かよ…?
美玲の鈍感さに呆れながらなんでもないと返した
この事件が新たに愛美の誤解を生むなんて今の俺は知る由もない
彩の家に泊まらせてもらった次の日私はいつもより早く目が覚めた。だけど、私が起きた時には既に彩の姿はなく彩を探しにリビングへと降りた
「あ、おはよ」
『おはよ』
リビングに降りるとキッチンで朝ごはんとお弁当を作ってる彩の姿
そう言えば、お弁当自分で作ってるって言ってたっけなんてぼんやり思った
「やっぱり、腫れちゃったね。……、ちょっと待ってて」
それだけ言って作っていたお弁当を一旦中断させ、蒸しタオルを作ってくれた
「お弁当、愛美の分もあるから、一緒にたべようね。」
そんな優しい言葉と共に私に蒸しタオルを渡してくれた彩にこの子が親友で良かったと止まったはずの涙がまた零れそうになった
彩と一緒に朝ご飯を食べ一緒に登校して一緒にお昼ご飯を食べといつもよりずっとべったり彩と一緒に居た私
少しずついつもの調子を取り戻して来た私。そんな調子も放課後に崩れる事になるとは思いもしなかった
「あ、いけない…。今日なんか放課後来て下さいって言われてて…、どのぐらいの用事かもわからないから先帰ってていいよ」
『…、わかった』
絶対告白だよね、と思いながらこれ以上彩に迷惑掛けられないし大人しく帰る事にした
『じゃ、また、月曜日!』
「うん!」
彩と教室で別れ私は帰る為に階段を下った
靴を履き替えて外に出ると何やら騒がしい
校門の所に人だかりが出来てる…?
そこを通らないと帰れない為人だかりに近寄る
近寄って分かったけど見事に女子ばかり…。皆カッコイイって言ってるから男子なんだろうなと特に興味もなかったので素通りしようとした。中心に居る人に名前を呼ばれるまでは…。
「愛美!!」
『…え?』
私を呼ぶその声を私は知ってた。だって私が聞きたくて聞きたくてしょうがなかった声だもん。間違える訳ない
思わず立ち止まってしまった私にその声の主はどんどん近づいて来て私の手を引いた
『え?ちょ…、離して』
「ヤダ、……ここだと人多いな…。移動するから」