次に、竜二の指はブラックコーヒーのボタンを押そうとしていた。
竜二がよく飲む、ブラックコーヒー。



それは、たぶん竜二の分。



「えいっ」



私は竜二が押す前に、違うボタンを押す。

それから、ガコンと下から飲み物が出てきて。取り出し口からとって、それを竜二に渡した。




渡したのはミルクコーヒー。



竜二は甘いものが苦手で、よくブラックコーヒーを飲むことを知っていた私。
甘いジュースや、ミルクコーヒーなんて飲んでいるところを見たことがない。




「さっ!早く着替えて、お昼食べましょ。お腹すいちゃった」




今度は私が竜二の手を引いて歩く。
後ろからは「…たまにはいいか」なんて言う声が聞こえてきた。




それは呆れた声ではなく、なんだか明るいトーンだったような…
そんな気がした。