「詩優には渡せたの?」
私の問いかけにこくりと頷く。
だったら何の心配もないだろう。花莉が本命に渡せたんだから。
私のことなんて考えなくていいのに……。ほんと、花莉は優しいんだから。
「いいのよ。私たちのことなんか気にしなくて。本命に渡せればそれでいいの」
「でもね、市販のチョコでもみんなにもらってほしくて…っ!私、いつもお世話になってるから…」
花莉は私から離れて、ごそごそと自分の鞄の中を漁る。
それから出てきたものは、ピンクの水玉模様の個袋。
「京子、いつもありがとう」
よかったらもらって?、と花莉が個袋を差し出す。
その袋には、“京子”と私の名前が書いてあって。
袋の中には小さなチョコがたくさん入っていた。
…いつもありがとうは私の言葉だよ……花莉。
「ありがとう、花莉……本当に大好き」
差し出されたチョコを受け取ると、花莉は嬉しそうに笑う。