真由はパッと目を開けて立ち上がり、先生が指示した箇所を日本語に訳し始める。
 スラスラと音読するところはいつもの調子なのだけど。

「よーし、オッケーだ」

 訳し終え先生がオーケーすると真由は座った。

 うーん、変だよなー。

 何事もなかったかのようなフツーの顔をしているしね。
 マジで変だよ。

 真由はチラッと俺の顔を見ただけで、無言のまま教科書に目を向けた。
 
「何だか…、妙だよなー…」

 俺は心の隅にポッカリと穴が開いたような寂しい思いを抱くようになった。

 いったい…、

 コイツに何があったんだろう?