家に帰ると、母に大目玉をくらい、一週間外出禁止令を言い渡された。

「遅くなる」と電話で聞いたが、夜中をすぎるとは思っていなかった、携帯の電源も切れてるし、

 どれだけ心配したか、もう少しで警察に電話するところだった、とさんざん怒られた。

 その謹慎中、夏瑛は熱を出して寝込んでしまった。

 夏場とはいえ、夜の冷気の中に長い間立っていたせいかもしれない。

 でも、同じ人に二度も失恋してしまった、という精神的ショックのほうがもっと大きな要因だった。

 「スイスの土産があるからおいで」とようやく風邪が治ったころ、叔父から誘いの電話があった。

 叔父の家にもし靭也がいたら、と思って躊躇(ちゅうちょ)した。

 まだ会いたくなかった。

 諦める決意はしたけれど、会ってしまったらまた前と同じになりそうで。

 断わろうと思ったが、叔父たちによけいな心配もかけたくなかった。

 「うん。昼ごはんを食べたら行きます」と返事した。