「どういう意味?」

「彼氏はいないの? 周りの男がほっとかないと思うけど」

「……いないよ、そんなの」

「へえ、そうなんだ。じゃあ出来たら紹介しろよ。夏瑛にふさわしいやつかどうか、おれが確かめてやるから。妹みたいなものだからな、夏瑛は」

 
 シャボン玉はあっけなくはじけた。

 靭也にとって、夏瑛はただの妹分。

 異性と認識されていないことはもちろんわかっていた。

 でも、こんなふうにはっきりと言葉にされると、鉛を飲みこんだような気持ちになる。

 こうして、時間を共に過ごせるのはうれしかったが、一緒にいればいるほど、残りの日が少なくなっていけばいくほど、胃が絞めつけられるような苦しさは増していく。