「絵を描くときの姿勢もいいよ。夏瑛は集中力があるな。真剣勝負で挑んでる感じがする」

「そうかな。自分ではよくわかんないけど」

「おれたち、よく似てるよな。その、物の感じ方とか。だからかな、夏瑛と一緒にいてもまったく疲れないよ。おれ、他人といるの、あんまり得意じゃないんだけど」

 えっ? 靭にいちゃん、急にどうしたのだろう。

 心の中で期待のシャボン玉が膨らみだす。

「それに見直したよ。料理もうまいし、掃除の手際もいいし」

 ああ、顔から火を噴きそう。

 きっと真っ赤になってる。

 靭にいちゃんが変に思わないといいけど。

 それから靭也は夏瑛の髪から手を放し、立ち上がると言った。

「だけど貴重な夏休みをこんなとこで、油売ってていいのか?」