こうして、夏瑛の最高の夏休みは始まった。

 帰り道、次に行くときは何を作ろうと、うきうきしながら自転車をとばした。

 家に帰って、食事の支度をしているときも、後片付けをしているときも、お風呂に入っているときも、ベッドに入ってからも、夏瑛のふわふわした気分は収まらなかった。

 何しろ、あんなに長時間、靭也とふたりきりで過ごしたことなんて今まで一度もなかったのだから。

「靭にいちゃん」夏瑛は右頬をそっと撫でた。

 デッサンを直してくれたとき、靭也の手がすっと当たった部分。

 今でも熱を持っているように感じる。

 今日1日で自分がどれだけ靭也のことを想っているかがはっきりした。

 とにもかくにも自分は靭也が好きだ。