「じゃあ、今日はここまで」気づくと、時計の針は5時を指していた。

 夏瑛は「ありがとうございました」とあらたまって頭をさげた。

 靭也の顔がほころぶ。

「そういえば、靭にいちゃん、ここに泊まり込みなの?」

「ああ。留守番も兼ねてるからね」

「じゃあ、食事は?」夏瑛は訊いた。

「うーん、コンビニで買ってくるか、カップ麺とか、かな」

「えー、身体壊しちゃうよ。そんなんじゃ。じゃあ、わたしが作ってあげる。教えてもらうお礼に」

 靭也は驚いた顔をした。「夏瑛、料理できるの?」

「これでも、家では家事担当ですからね。お母さん、帰りが遅いから」

「へえ、じゃあ、頼むよ。本当はすごく助かる」そう言った。

 夏瑛もうれしかった。

 靭也に感謝されるなんて、夢のようだ。