「夏瑛、今までにデッサンはしたことある?」

「ううん。とくには」

「じゃあ、本当の初歩からだな。空いてる日はいつ来ていいよ。おれは毎日ここにいるから」

「ありがとう。でも、靭にいちゃんの制作の邪魔にならない?」

「ぜんぜん。先生に頼まれたことだし、おれのせいで試験に落ちたとか言われても困るしね」と、

 冗談めかしてそう言うと、にっこり微笑む。

 いつもの優しい靭也。

 夏休みの間、こうやって何度も会えるかと思うと嬉しすぎてこわいほどだ。

 叔父さん、あらためて感謝!

 「よし。じゃあ、さっそく始めるか」

 靭也は伸びをしながら、画材が置いてある机に向かっていった。