そして、待ちに待った夏休みが始まった。

 夏瑛は、はやる気持ちを抑えきれず、昼食をすませると同時に叔父の家に向かった。

 ふだんは自転車で15分ほどかかる道程を、3倍速ぐらいで飛ばしてきた。

 到着してしばらくの間、はずんだ息が収まらなかった。

「こんにちはー」アトリエに通じる扉をノックして、靭也の返事を待った。

「やあ、来たね」

 大きな天窓のあるアトリエには陽光が降り注いでいる。

 靭也の髪が光を受けてきらめく。

 夏瑛はまぶしさに目が眩みそうになった。

「さて、これからびしばし扱【しご】くぞ。覚悟しとけよ」

 とちょっと怖い口調で言いながらも、靭也は晴れやかな笑みで迎えてくれた。