『言い忘れたが
着るものは気にするな
俺が用意しておく』

海堂から補足のメールが届いた

ヤツの店に
何を着ていくべきか
悩んでいたから
俺はほっと安心した

家に戻ってきた
今夜から仕事ができるのを
喜んでいた

シャワーを浴びて
スーツを着ると
仕事に行く準備をしていた

荒々しくドアが開くと
どたどたと足音が
聞こえてきた

「桜さん、帰ってきたの?」

俺は洗面所から顔を出すと
桜さんが
居間のソファに鞄を投げるところだった

「なんなのよ!
どうして私の契約書がないわけ!
…ていうか
なんであの店が
私のじゃないのよ」

機嫌が悪いようだ
大きな鞄は重たそうに
ソファに沈んでいた

「どうしたの?」

髪の毛のセットが
終わった俺は
桜さんの後ろに立った

「不動産屋にお金を
私に行ったのよ!
社長がお金を用意して
くれたから
言われたとおりにお金を
持って出かけたら…

店がないのよ
私の店が、他の契約者になってるの?

わけが
わからない

何で?」