私は大河原さんの後ろに
ずっと立っていた

大河原さんが経営しているという
探偵事務所に行くと

制服の警察官やスーツの刑事が
事務所内で動き回っていた

「大河原さんですね?」

中年のスーツを着た男が
大河原さんに話しかけてくる

「ええ、そうです
金庫の金が盗まれたって
聞きましたが?」

「ご安心を
犯人なら
わかっています

室内にある防犯カメラにも
映ってましたし
金庫から指紋も出てますから」

刑事がメモ帳を見ながら
話をしていた

「そうですか…
依頼人の表情を見たくて
つけておいた
防犯カメラが
役に立つとは…
思いませんでした」

大河原さんは
刑事のおじさんと
しばらく話をしてから

私と別室に入った

「はあ~
すっきりした」

え?

大河原さんは
笑顔で
ソファに座ると
肩を回していた

「あの…お金…
大変でしたね」

「何で?
犯人はわかってるんだし
警察も犯人の自宅に
向かってるんだから」

「お金、戻らないかも
しれないのに…」

「金?
んなもん、いらねーよ」

は?

「さて、と
携帯、携帯」

大河原さんが
私の目の前で

私の携帯アドレスを
削除した