「ご要望の親子丼でーす」


残業続きの月末を乗りきり、定時で帰れた今日。


座る祐二の目の前に、お膳ごと差し出した。


「何か洒落てね?」

「でしょでしょ。帰りにお膳と食器買い足してきたんだ」

うれしそうに言う私に


「さすが、ちひろちゃん
センス抜群っスね」


バカにしたように笑っている。


「何かバカにしてる?」

「違う違う、そんなふくれんなって」

「こうやってさ、お膳に並べて出すと
質素なごはんでも豪華に見えない?」

「豪華に見えなくても、ちひろが作るのは
何でもうまいけどな」


おい・・・そこでなぜキュン発言するんだよ。


ほんっと・・・女慣れしてるというか
自然に喜ばす言葉をしれっと言える能力でもあんのか?

もしかして、あれか。

これ以上私に惚れさせて
おかしくさせようって魂胆なのか?


「どうした?食わないのか?うまいぞ?」


・・・なわけないか。