「クソッ、なんであんな嘘ついちまったんだよ…」

明るい広い体育館に1人、自分の声がこだました。本当は彼女なんて出来ていないんだ。

ただ、先輩に好きな人がいるのかを聞きたかった。まだ、あの幼なじみのことが好きなのかと。


___俺じゃ、ダメなのか?

と。聞けるものなら聞きたかった。それだけなのに。


___「彼とは別の人。失恋しちゃったけどね。」


あんなにも愛おしそうな、切なそうな顔をするから何も言えないじゃないか。先輩は俺の幸せを願ってくれている。

だから咄嗟に嘘をついちまったけど……、先輩。ごめんなさい、俺、彼女なんていないんです。




「お待たせ。」


制服を来て、更衣室からでてきた先輩。鍵を閉めようと後ろを振り返った瞬間に柔らかそうな髪が揺れる。



好きなんです、先輩。あなたが。