子犬のように駆けてきて、「先輩!今度あそこのカフェ行きませんか!?」なんて誘ってくるからデートみたいだと思ってしまうじゃないか。

いや、私が悪かったんだ。幼なじみに彼女が出来たばかりで失恋してしまった。その寂しさを埋めるように彼と喋って仲良くなった。彼が話しかけてくれた。

いくらか時が経って、幼なじみよりも好きになっていたことに気がついた。でも私が好きだと気がついた時にはもう、恋人がいるんだ。



選手たちの記録をまとめている時に1人で残っている彼と話をした。

「先輩って好きな人とかいないんスか?」


気が付かれていたら、どうしよう。あなたのことが好きだと。

ほら、否定しないと。いないよ、って。
声が出なくて頭が真っ白になっている私よりも口を早く開いたのは彼だった。


「もしかして……、まだ、好きなんっスか?」

悩んだように、目線を私に合わせる。

「……っ、え、」

バレてた?バレていた?何故、何時……。いや、尻尾は掴ませなかったはずだ。バレていないはず。


「まだ、あの幼なじみのことが好きなんですか?」

2回目に言った彼のセリフで分かった。ああ、そうだ。仲良くなった数日後に今日みたいなそういう話をした時に言ったんだ。幼なじみに失恋したと。

「違うよ。」

「え…、じゃあ、」

「いるけど、それは彼とは違う別の人。また、失恋しちゃったけどね。」

ああ、なぜそんなにに辛そうな顔をするの。君には関係ないじゃない。そう、あなたは関わっていない。私が勝手に君に恋心を抱いているだけ。

君にバレない限り私と君にはなんの関係もない。それなのに、何故そんなにも痛そうな顔をするの。なんで、泣きそうなの。