「サユ、それは多分、俺の友達だよ…。
『宮川 来真(ミヤカワ ライマ)』って子がいてさ、小4の時に死んだんだ……」

寂しそうな顔をするお兄ちゃん。
今までに見たことのないお兄ちゃんのその表情に、私は言葉を失った。

「小学校の卒業式の日、あいつの分の証書も一番仲が良かった俺が受け取ったんだ。あいつの親はあいつが死んで精神を病んでしまったからね。」

そうだったんだ…
そんな理由があったからお母さんも…

知らなかったとはいえ、私はお母さんとお兄ちゃんに申し訳なくなった。

「お兄ちゃん…ごめんなさい。私何も知らずに…」

お兄ちゃんから目をそらし俯いた私。
すると、お兄ちゃんの長い指がすっと私の頬に触れた。

「良いんだよ。サユが見つけれるような所に置いてた俺の責任だし。…でもサユ、この事はプライバシーを守る為に、誰にも言わないでね。」

私の頭を優しく撫で、微笑むお兄ちゃん。
私はコクリと頷いた。

私はお兄ちゃんが小学6年生の時に生まれた子供だ。
私が生まれる前の11年間は何も知らない。
私のいない私の家族がどんな人と関わり、どんな11年間を過ごしてきたのか何も知らない。
中には今回みたいにあまり良くない思い出もあるだろうから何でも軽々しく聞いちゃいけない。

この時私は、私の知らない私の家族に好奇心を持つのはやめようと、そう思った。

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