王都を抜けて、王城を通り越して。



その先にあるのが私が住む帝国城。



「寒っ…」

「だから言ったではないか」

「もう少し速度を…」

「ダメだ。これより寒くなる。ちょっと待て」



馬を止めた殿下は、積んでいた荷物から大きめのマントのような物を取り出し、自分にかけた。



そのままフワっと包まれて…。



「ここに入っていろ。少しはマシだ」

「は、はい…」



殿下が優しいことをしている。



明日は雪が降るかもしれない…。



「優しいと、怖い…」

「…………俺だけ着ててもいいのだが?」

「ウソです、ごめんなさい」

「城に帰ったら遊んでやるからな、アリス」

「ひっ‼︎」



ニヤッと笑った殿下の優しさに、初めて触れた気がした。



暖かいのは、殿下の体温のせい?



それとも、優しくされることに慣れていないから照れているの?



そんなの考えてもわからなくて、日が暮れる直前に、城へ戻ってこれた。