帰ろうとしたけど、道が分からないことに気がついた。

あーあ。

やっちゃった。

このまま帰れないかも。

「王子様はどこにいるのかな……」

あたしは帰ることを諦めて、展望台のベンチに座った。

「華っ!!」

響がすごいスピードでこっちに来た。

「え、なんでここが?」

「なんとなく。それより帰るぞ。風邪でも引いたら困るし」

やっぱり響、優しい。

「……うっ……っ……」

「ど、どうしたんだよ」

突然泣き出すあたしに戸惑っていた。

「……あたし、間違えてた……右京くんは全然王子様なんかじゃなかった」

ちゃんと見て好きになればよかった。

「だから言ったろ?やめとけって」

響はあたしを抱きしめてくれた。

「………お前に傷ついて欲しくなかった」

響は何か呟いたようだったけど、大泣きしているあたしには聞こえなかった。