「なぁ、今浜谷って言ったよな…?

一階の今年営業で入社した浜谷奈乃花が俺がタイヤ交換した時の子なのか?」

「あぁ、そう」

身を乗り出して早口で聞いてきた岡田に直ぐにピンときて俺の頬が緩む。

「ふーん…手…貸そうか?」

途端に岡田がカッと顔を赤らめて俺から顔を背けた。

「…どうして俺が気に入る子はお前がタイプなのかな…」

ぽそっと呟いた岡田がため息をついたかと思うと俺を睨み付けると

「お前は一切手も口もだすな!

自分でどうにかするから関わるな!

でも、重要な情報ありがとう…

ここから先は自分でどうにかする。

早急に…誤解は解いておくから安心しろ。

用件はそれだけだよな?

早くしないと飯食う時間なくなるな。

じゃあな、香田。

あぁ、そういえばまだ言ってなかったな。

今さらだけど、結婚おめでとう。

末永くお幸せに」

眼鏡を押し上げながら、クッと笑い岡田は立ち上がる、と打ち合わせスペースから姿を消した。

悩みの種がひとつ消えたことで、俺はひとまず安堵のため息を漏らした。