「はぁぁ」

深いため息がこぼれた。

「それ、本当に俺?」

「…小雨が降っていた夜で、帽子を被っていて顔は…よく見えなかったんですけどYAMASE のツナギを着ていて…左胸にネーム刺繍がしてあって…」

「でも、俺にはそんなことした記憶ない。

なぁ、浜谷はもしそれが俺じゃなかったら俺には興味もってないよな?

手伝ってくれたやつに会いたいんだよな?」

「…そんなのわかりません!

だって香田さんを私は探してて会いたくて入社したんです。

香田さんは忘れているのかもしれないけど、別人だって否定するのはひどくないですか!」

ムッとした浜谷はキッと俺を睨み付けると腰に手をあてて

「絶対!!

売り上げトップをとりますから!

覚悟していてください香田さん!!

必ず私は香田さんとデートしますから!!」

大声でいい放った浜谷はそのまま唖然としている俺に背を向けて事務所へ颯爽と歩いていった。